Yuki Junzo
腐蝕/紙
由城順造展
1998.11.30(月)〜12.6(日)
(AM11:00〜PM7:00 最終日PM4:00)
作品点数約20点。
和紙にトノコをつけ、銅粉を塗り腐食させている。
40x40cm
160x60cm 4枚
「もの」となる世界
感覚は突然目覚める。 眠りから覚める日常と違って、何ものかを一気に吸収する。
先達って由城の作品が数秒のうちに気に入ってしまった。
私はしばらく見入っていた。 今までにない感性が触発され、不思議なところに運ばれる思いだった。
昨年、由城は独自の腐食の方法から屏風を制作した。
私は窮屈な気分の中で思ったものだ。
現代美術の作家がこともあろうに、何も屏風を手がけなくてもよかろうにと。
私にそれは屏風との悪戦苦闘にしか映らなかった。
あれから一年、彼はまた屏風を作った。 紛れもない屏風をである。
ところが一目見たとたん、屏風という概念が私に消えてしまっていた。
作品によほどの力があるからだろう。 由城は「びょうぶ」を作った。それは「もの」となる世界であった。
由城の「もの」の世界は屏風からの解放でもあった。
ところで、この度の作品は今までより偶然にゆだねる度合が減じたように思える。
由城は自身を作品に投影しないよう極力注意を払ってきた。
腐食の過程で人間も「もの」の世界に入ってしまうという認識が窺えた。
だが最近の由城にはそんな理念なんかどうでもよく、自身を刻み込んでしまうことにも頓着しなくなったのではないか。
「もの」となる世界を想像すること自体、そのエネルギーにもパラドックスが内在しているのである。
1998年10月5日 神谷 忠彦
由城順造DATA