Demachi Mitsunori

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出町 光識 展


2002.10.28(月)〜11.3(日)
(12:00〜20:00 最終日11:00〜15:00)


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陶器: 出町光識
花: 谷口貴泉


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(作者)


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写真:「真壁2002天降」真壁町谷口家前
陶: 高さ約1.5〜3.6
撮影:錦織朱美(にしごりあけみ)


一粒の雨の恵み
今年の9月、茨城県真壁町。
「真壁2002天降(あめふり)」プロジェクトで、
人々に恵みをもたらす雨が降るようにと出町光識は陶の塔を立てた。
薬医門、お菓子屋、旅館の玄関、土蔵の中、醸造所の正面広場など、
さまざまな場所にそれは点在している。
この写真はその時のものである。
この作品は真壁の土で焼き、何段も積み上げて約1.5から3m余の高さがある。
頂上の部分には穴が空き、そこに雨が降り、恵みを呼び込もうとしている。
彼の思い込めて、指で種を埋めるような跡が、ぐるりと線状に付けられている。
こ塔の背後は米蔵で、裏手には製糸工場があった。
塔の周りでは、先生に引率された小学生達が「タイトルを決めよう」と触ったりしながら騒いでいる。
ここにはさまざまな人が集まり、散って行った。
お茶の点前があり、来られたお客1000人余に茶菓が振る舞われたと聞く。
この作品は地元の生け花作家、谷口貴泉との合作になった。
彼の塔がただ立っていたならば、何か不自然なものがそこにあると受け取られるだろう。
しかし、彼女はその塔と脇にあるヒマラヤ杉と野葡萄を麻紐で結びつけ、
また赤いリボンを木の頂上から垂らした。
するとその場は天に向かって開かれた場所になった。
背後の土蔵を屏風のように配し、町をも取り込んでいる。
出町光識はある時「水」の絵本を読んだ。
内容は「水」が雨となり地を潤し、やがて川となり海に流れ着く。
「水」は神様に天に昇りたいと願った時、雨となって地上に降り、
人々に恵みを与えるなら、天に昇らせてあげると約束した。
水辺で育った彼は水に特別な思いがある。
彼の仕事は土を捏ね、釉薬を掛け、焼く。
その器に飲み物や料理を入れ、洗われる。
水の循環無しでは完結出来ないのは絵本と同じであった。
真壁の町で二人は「天から雨が降る」思いを作品に託した。
そこは人を迎え、持て成す大きな町の床の間だった。
出町光識は真壁の土を使い、
谷口貴泉は裏手にあった工場のボイラーの部品に、真壁の花を生けた。
筑波山を望む真壁の地は万葉の時代から歌われ、
今も古い土蔵があちこちに点在している。
歴史のある町に育った樹齢60年の大きなヒマラヤ杉は何を観ていたのであろうか。
ここに来た人達が一粒一粒の雨になり、銀座に流れて来た。 
(T-BOX高橋盛夫)


出町 光識(Demachi Mitsunori)

生け花: 谷口貴泉(やぐちきせん/いけばな龍生派)
1935福島県生まれ
現在茨城県真壁町在住